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それほどまでに、忍がそこまで愛する女は誰なのか。
少なくとも、自分でない事は確か。
美羽の心を凍えさせるような冷たい風が吹き抜けた。
「その女っていうのはね」
そこで一旦言葉を切った奈緒は、美羽に笑いかけ、止めを刺した。
「あなたの母親よ」
言葉の意味が理解出来ず、言葉も出ない美羽に奈緒は畳み掛ける。
「忍の中にはね、あなたの母親、紗羽がずっと息づいてる。
美羽、あなた紗羽にそっくりよ。
忍にとって、紗羽にそっくりなあなたは、代わり。
そうよ、美羽は、紗羽の代わりなのよ。
そうじゃなければ、忍があなたみたいな子、相手にするわけないでしょう?」
一気にまくし立て、高笑いした奈緒に、美羽は返す言葉も出てこなかった。
*
リビングのサイドボードには、大介が趣味で集めたお気に入りの高級酒が並ぶ。
奈緒はその中で特に高価な洋酒、コニャックのヘネシーVSOPを取り出した。
瀟洒なデザインのガラス瓶を掴んだ彼女は、それを持ってソファーに座り、ブランデーグラスに豪快に注いだ。
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