茶柱

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 度数の強い琥珀の酒をグイッと飲み干した奈緒は、座った目で空を睨んだ。  美羽は、何も言わなかった。 何も言い返せなかったのだろう。 表情の失せた顔で黙したまま、自室に戻って行った。 その後は物音もしない。 泣き寝入りでもしたのだろうか。  静まり返った家の中。 時計の音のみが聞こえる静寂に耐え切れなくなった奈緒は酒を呑み出したのだ。  酒に走るなど、初めてのことだった。 空になったグラスに再びブランデーを注いだ奈緒は、今度はゆっくりと呑み始めた。  どうして、こんな事になったのだろう、とグラスを手にしたままソファーに深く身体を預けた奈緒は目を閉じた。  美羽は、どれほどのショックを受けただろうか。 彼女の受けるショックなど、想定内だった筈なのに。 どうして自分はこれほどまでに胸に痛みを?  苦い、後味の悪さを覚える胸。 奈緒は苦しげな表情で酒をあおった。  美羽を娘として可愛がってあげたい、大事にしてあげたい、そんな気持ちが意識の隅に残っている。 しかし、その心を必死に否定して、打ち消してきた。 許せないものの方が大きかったから。
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