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「ワシはこんな手術、絶対に受けんぞ!」
「熊川さん、血圧上がりますから、とりあえず落ち着いて」
眼科が入っている新病棟の特別病室で、少々恰幅の良い老人患者が我儘を言い、対応に当たる看護師の手を焼かせていた。
老人は、病室にセットされているソファーにどっかと座り、梃子でも動かん、といった風だ。
隣に立つ着物姿の上品な夫人も打つ手なし、と困った顔をしている。
どこが悪いのか、と思わせる血気盛んで高慢な老人は、尚も喚き散らした。
「血圧上がれば直ぐに下げられるじゃろう、ここは病院じゃろうが!」
「そういう患者さんを、僕達はモンスターペイシェント、通称モンペと呼ぶんですよ。
医師は超能力者でも魔法使いでもありません、病院は何でもやってくれると思ったら大間違いですよ」
荒れ狂う気流を一瞬で鎮めてしまうような、低く落ち着いた声が病室に響き渡った。
「緒方先生!」
病室にいた二人の看護師は現れた忍を見、あからさまに安堵の表情をみせた。
病室の中に入って来た忍は、彼女達の分かりやすい態度に苦笑した。
「ナースがそれでは駄目だろう」
「はい、すみません」
看護師二人は老人からすっと離れ、その代わり、忍が傍に立った。
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