34人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕をお呼びと伺いましたが?」
「そ、そうじゃ」
ブルーのウエア姿の、黒髪の美貌の青年医師が放つ独特なオーラに呑み込まれ、さっきまで高圧的な態度でふんぞり返っていた老人が、嘘のように大人しくなった。
忍は、看護師に視線を向けた。
「眼科の先生達は?」
「今ちょうどカンファレンスが始まったところで……」
そうか、と腕を組み、右手を口元に当てた忍は少し思案した後、言った。
「じゃあ、熊川さんには俺が少し話しをしよう。
後で改めて担当の医師がちゃんと話しをするようにしてくれ」
はい、と答えた看護師に、老人と二人にしてもらうよう頼んだ忍は、夫人にも席を外してもらった。
「では、改めて」
ソファーに仏頂面のまま座る老人に向き直り、忍はゆっくりと口を開いた。
「僕をお呼びになられたのはどうしてですか」
老人は、うむ、と黙り込んでしまった。
最初のコメントを投稿しよう!