茶柱 #2

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「今帰ってきたの?」  和也はばつの悪そうな顔をし、頭を掻いた。 「今夜は呑んで来たんだ」  そうなんだ、と柔らかに笑った美羽に、和也の顔が、心を解されたように無警戒な表情になった。 「実は、お義父さんが今夜急に出張になってね、ちょっと解放感に浸ってしまったんだ」  声を落とし、肩を竦めて見せた和也に、美羽は、お父さんたら、と笑った。 そんな美羽を見て、和也が言う。 「美羽こそ、どうしたんだ、その顔、パンダみたいだ」  あ、と美羽は両手で顔を挟んだ。 メイクをしたまま泣きはらした顔は、腫れた目元で、アイラインもアイシャドウもマスカラもいっしょくたになりまさにパンダのようになっていた。 鏡を見なくとも想像が出来た美羽は、父に出来そうな適当な説明が思いつかず、まごついた。
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