茶柱 #2

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 すごいだろ、と苦笑いする和也は片付けを始めながら言った。 「訳のわからないことを言ってぐずって絡んできたけど、なだめすかしてなんとか部屋に連れていって寝かせたんだよ。 お蔭で僕の酔いはすっかり醒めたよ。」  片付けを手伝う美羽の胸が痛んだ。  完璧主義で常に隙のない母をこんな風にしてしまったのは自分だ。 美羽の心が、軋む。  でも、と美羽は思う。 どんなに強く抱き締めても、どんなに肌を重ね触れ合っても満たされないほど狂おしく、心が求めてやまない愛しい人。 その人への想いを断つことなど、考えただけでも身震いしそうだった。 忍はもう、美羽の全てを占めている。 美羽の、全てだった。  許されない関係であることは、美羽は重々分かっている。 だから、奈緒は? と考えられたが、それだけではない何か、女としての執念のようなものが感じられた。 奈緒からは刺すような圧力を感じた。
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