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荒れた部屋の片付けに勤しむ父。
それを見る美羽の胸は、父に泣いてすがりたい気持ちで一杯になっていた。
幼い頃から広い心で見守ってくれた、大きな父。
彼なら、自分の全てを聞いてくれるだろうか。
美羽は、小さく頭を振った。
今は父に聞ける事を聞くのだ、と美羽は手を休める事なくさり気なく和也に話し掛けた。
「お父さん、私のお母さんって、どんな人だったの?」
忍の初恋。
奈緒の衝撃的な告白は、美羽と忍の関係を断絶させる為だけの方便とは思えなかった。
自分の知らない母の姿を知る事がこんなに怖いとは。
美羽の声が微かに震えていた。
そんな美羽の想いなど知らない和也は、両手に酒瓶を持ち、キッチンに入って行きながら言った。
「そうか、美羽は、覚えていないのか」
父の背中を見る美羽は、うん、と答えるのが精いっぱいだった。
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