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自分で決めた道、生き方。仕事を生きがいに生きている、それが誇り。
寂しい、なんてチラリとでも思う自分など想像したこともなかった。
「私ったら……」
綾子は小さく呟いていた。
知らず知らずのうちに、気持ちが傾倒していた。
それは想像を遥かに超えて。
嵌まってはいけないと分かっていたから、危険なゾーンに踏み込まないよう細心の注意を払っていたのに。
アキラメナケレバイケナイノ?
無意識に脳裏をフッと掠めて行った言葉に綾子はフルッと頭を振った。
諦めるなど。
そんな言葉、最初から存在する筈のない関係だった。
けれどもそれは、彼が誰かに本気になる事などないだろう、と心のどこかで思っていたからなのかもしれない。
貴方を本気にした人は、誰なのだろう?
不意に胸を締めつけるような哀しさに襲われた綾子の中に、フワリと優しく包み込む存在が蘇った。
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