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この関係を保つのか、それとも #2
H駅は、西武池袋線の終点駅だった。
美羽が通う大学の最寄駅からは、二駅。
仕事帰りに来ると思われる大河には、都心からこの駅までの距離は近いとは言い難い。
それでもここを待ち合わせ場所に選んだのは、美羽の身体を気遣ってくれたからと思われた。
美羽は申し訳なく思いながら改札を出、駅ビルから外に出た。
大河はロータリーで車を停めて待ってる、と言っていた。
「ブルーのBМW……」
事前に聞いてあった車種と色を思い出し、駅前ロータリーを見回した美羽はタクシー乗り場の向こうにメタリックブルーの外車を見つけた。
大河はハンドルに掛けた腕に顔を乗せ、駅ビルから出てくる人の流れを見ていた。
仕事は終わっていなかった。
今夜は呑まないから遅くなっても社に戻って片づけよう、と思ったものの、やはり中途半端で抜けるのは気が引けた。
切りのいいところまで、と時間を気にしながら働いていた大河に、社長の特権をこんな時に使わないでどうする、と笠原が背中を押してくれた。
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