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大河の言葉に、美羽はハッと顔を上げた。
透析患者には好ましくない食材は多々ある。
それらを避けての外食は難しい。
美羽には、大河に食事に誘われたものの、気を悪くさせないか、という不安があった。
しかし、大河はちゃんと理解してくれていた。
「大河、ありがと。おいしくいただきます」
顔の前で手を合わせ、ニコッと笑った美羽。
大河は眩しそうに目を細める。
「美羽」
名を呼び、何か話そうとした大河に美羽は、ん? と小首を傾げてみせた。
真っ直ぐで澄んだ瞳に魅入られ、大河は言いたい言葉を呑み込んでしまった。
肩を竦めてフッと笑うに留め、卓に並ぶ料理を手で指し、恭しく頭を下げる仕草をした。
「遠慮なく召し上がってください」
そんな大河に美羽は、
「はい、遠慮なく」
と明るく微笑んだ。
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