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片付けが終わり、綺麗になった卓の脇に着物の裾を揃えて正座した楓花は、薩摩切子の瀟洒な器に盛られたリンゴのコンポートを美羽の前に置いた。
「薬膳は、なるべく続けて食べて欲しい料理だからね、ここに食べにきていただいたお客様がお家にお帰りになっても、作れそうな品を必ず二品以上は組み込むよう心掛けているのよ。
身体によいものをいかに美味しく食べられるか、という提案をさせてもらうのが私のお仕事だと思っているから」
ああ、だから……と美羽は楓花を見た。
「だから……前日の予約は受け付けないんですね」
「そういうこと」
赤い切子のガラスに黄金色に煮られたリンゴ。
クコの実が散らされていた。
美羽はそれを見て思う。
始終、自分の身体の事を考えられたメニューだった。
「美羽ちゃんが透析患者さんだってこと、大河から昨日聞いたのよ」
美羽は顔を上げ、楓花を見た。
楓花は優しく微笑み言葉を続けた。
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