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楓花の表情が少し硬くなったようだった。
「んー、そうかな。美羽ちゃんたら案外――、」
楓花が何か言いかけた時、襖が開いた。
「あれ、美羽まだ食ってないのか。
姉ちゃんのお喋りに付き合わされてるのか、つーか、姉ちゃん、余計な事話してねえだろうな!」
あぐらをかきながら席についた大河が楓花を睨んだ。
「なんにも話してないわよー。ねぇ、美羽ちゃん」
明るく言う楓花は美羽に目配せした。
美羽は慌てて、うんうん、と同意したが、心の中では、今聞いた話が見つからない出口を求めてぐるぐると巡り続けていた。
楓花は‘案外’の後に何を話そうとしてたのか。
「ごめんね、召し上がって」
気になる問いの答えは見つからぬまま、楓花に促された美羽は気を取り直し、デザートフォークを手にした。
やわらかなリンゴのひとかけを一口サイズに切った時だった。
「そうだ、忍君は元気?」
ビクンと震えた美羽の手からフォークが離れ、カチャン、とガラス食器に当たった音が部屋に響いた。
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