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笠原に感謝しつつ、後を任せて社を出たが、待ち合わせ場所までの時間を逆算するともうギリギリだった。
美羽を待たせるわけにはいかない、と高速を飛ばして来たが、ここはどのインターから下りても中途半端な距離。
途中の赤信号すらイライラしつつ、なんとか間に合った事に大河は安堵した。
大河が美羽を見つけるのと、美羽が大河の車に気付くのはほぼ同時だった。
美羽を待たせなくて良かった、と胸を撫で下ろした大河は車から降りた。
「美羽!」
手を挙げ、声を掛けると美羽はホッとした表情を浮かべてこちらに走り寄ってきた。
毛先をほんの少しゆるく巻いた長い髪、トレンチコートにパンツ。
コートの中に淡い色のシャツが見えた。
大河は傍に来た美羽を見て、クスリと笑った。
「え、なに?」
美羽は、どこか変かな、と自分の恰好を確認した。
そんな仕草を見て、大河はハハハと笑い出した。
美羽が不安そうな表情で大河を見上げた。
「えー、なにー? 何か変かな」
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