56人が本棚に入れています
本棚に追加
美羽の胸に不穏な雲が垂れ込める。
「それは……?」
楓花が、フフといたずらっぽく笑った。
「年上キラーだから、忍君。
凄く印象に残っているのは……中学校の時の保健室の先生と噂になっていたってことかな。
あくまでも噂なんだけどね」
それは、楓花の何気ない思い出話。
しかし、美羽に、美羽の胸に計り知れない負荷を掛けた。
奈緒の言葉が美羽の中でリフレインしていた。
「忍が貴女なんかに本気になるわけがないでしょう!」
その通りかもしれない。
冷静に考えてみれば、兄が、自分のような幼い者に本気になどなる筈がない。
「お兄さんたら、スミに置けないのねー」
美羽は精一杯の明るさで、アハハと笑った。
何も知らない楓花は、でしょー、と一緒に笑っていたが。
「姉ちゃん、美羽が食べるタイミング失って困ってるだろ。昔の話はもういいよ」
ずっと黙っていた大河が二人会話を遮るように言った。
「あらホント、美羽ちゃんごめんなさいね」
最初のコメントを投稿しよう!