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「いや、この前より化粧が薄いと思ってさ」
「あっ」
美羽は、両手で頬を挟んだ。
そうだ、と再会した日の事を思い出す。
あの日、大河に会う前に、奈緒に連れられて行った化粧品店で普段はしないメイクを丹念に施されたのだった。
「あん時の美羽は、濃くはなかったけど、アイラインもチークもばっちりだった」
やだー、と困惑の表情を浮かべた美羽に、大河は優しく笑いかけた。
「いや、いいんだよ、やっぱ美羽はこっちの方がいい」
大河の言葉に美羽は恥ずかしそうに肩を竦めて笑った。
ナチュラルメイクにシンプルなファッション。
飾り過ぎない愛らしさを感じさせるスタイル。
昔のままの美羽に、大河は微かな安堵の感情を覚えていた。
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