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車の助手席のドアを開けた大河は優しく美羽を促した。
スマートなエスコートが厭味を感じさせることなく自然に出来る大河に、美羽は思う。
モテるんだろうな、大河。
仕事帰りと聞いていたからスーツなのかと思っていたが、意外にもラフな格好だった。
ジーンズにセンスのよいシャツを合わせ、ジャケットをはおる。
足の長いスタイルの良さが際立つ着こなしだった。
「スーツじゃないんだね?」
シートベルトをしながら美羽は大河に聞いた。
大河は縦列駐車していた車をゆっくりと出しながら、ああ、と答える。
「うちの会社のヤツはほとんどこんな感じ。
スーツは、そうだな……大学の入学式くらいでしか着たことねーかも」
「え、そうなの?」
驚く美羽にチラリと視線を送った大河がクッと笑った。
「だから、俺がスーツとか着たら七五三みたいになるぜ」
「しちごさん~?」
美羽もあははと笑った。
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