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大河はやはり、雰囲気づくりが上手い。
狭い車内をあっという間に居心地の良い和みの空間に変える。
車に乗る時のエスコートといい、この巧な空間作りといい、女性が放っておかないだろう。
美羽はふとあることに気づいてしまった。
「ねえ、大河」
「ん?」
ハンドルを握る大河は前を向いたまま美羽に返事をした。
車は駅前を抜け、国道に出ていた。
冬の夕方、短い日はすっかり落ち、テールランプの明かりがフロントガラスの先に連なる。
「助手席座る人……誰か決まった人、いるんじゃないの?」
美羽の遠慮がちな問いかけに大河はチラリ視線を送り、ニッと笑った。
「そんなのがいたら美羽なんか座らせてない」
「あ、そっかー、そうだよね、私なんか……って‘なんか’ってなに?」
美羽の軽いノリ突っ込みに大河はハハハッと明るく笑った。
「美羽なんかが気にする事じゃねーよ、っていう意味だよ」
優しい手にクシャッと頭を撫でられ、美羽は心に流れ込む爽やかな風を感じた。
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