消したい過去、消えない記憶

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 素直で、純な心を持ったまるで穢れのない少女は、そのまま大人になった。 紗羽の笑顔は原の胸に、今まで感じたことのない痛みを与えた。  一度だけの、決して許される事のない過ちは、その時期にあった――。  原は、真っ暗になった窓の外を眺めていた。 時折校門を出て行く車のヘッドライトが辺りを明るく照らしていたが、今、校門から一台の高級外車が入って来、道の途中に立っていた男の前に停まった。 不遜な態度で車を待っていた男は、辻だった。  辻が乗り込んだ車が走り去るのを見送った原は、小さく呟いていた。 「私も君も、随分と変わってしまったものだね」  
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