あなたについていきます

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 美羽のささやかな我儘。 忍は駄目とは言わなかった。 慎重に考えた彼は、知り合いに会う確率が低そうなここに美羽を連れてきたのだ。  ひんやりとした冬の空気に冷えていた身体が、愛しい人の温もりに震える。 「寒いか」 「ううん」  忍の腕に抱かれ、美羽は幸せそうに微笑んだ。 それを見て、忍も優しい笑みをみせた。 手を繋いだまま身体を寄り添い、二人はゆっくりと歩き出した。  足元のあちらこちらにどんぐりが落ちていた。 風に吹かれた落ち葉がかさかさと鳴り、踏めば乾いた音をさせる。 空を見上げれば冬の高い青空の下、紅葉の最盛期を終えた木々が枝を拡げる。 そのところどころに常緑の葉を付けた木の梢。  美羽の脳裏に、この風景をどこかで見た、というデジャブが起きる。 寺の境内、参道、遊歩道。 果たして、自分はここに来たことがあっただろうか。 「美羽、どうした?」
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