この関係を保つのか、それとも #3

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 空を茜色に染める西に傾く太陽が、大学構内の葉を落とした木立に色を添えていた。 教授部屋から見える大学部のグラウンドも土色と朱のグラデーションを描き、細く長い木々の影がそこに影絵を作っていた。  デスクに向かい、学生達の論文の下書きに目を通していた循環器内科教授、原靖史がつと上げた視線と窓の外に向けた時、ドアがノックされた。 「緒方です」  掛けていたメガネを外し、原は厳かな声で答えた。 「入りなさい」  失礼します、という声と共に、長身の麗しい青年医師が姿を現した。 今日も白衣ではなく、フットワークに優れたメディカルウエア姿だった。 「お話しがある、と伺いましたが」  忍は静かな落ち着いた声で言った。  研ぎ澄まされた神経は、いつでも相手の思考の先の先を予測する。 そんな涼しげで冷たくも見える切れ長の美しい目を原は真っ直ぐに見据えた。 「そこにあるパンフレットに目を通してくれないか」  忍は数歩前に出、応接セットのテーブルに上に拡げられていたパンフレットを手にした。
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