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「康太……」
雪江が窓の外を眺める康太にそっと手を伸ばした時だった。
「中谷さん」
柔らかな、美しい声が雪江の名を呼んだ。
その声に主が直ぐに分かり雪江は、これは天の救いかもしれない、と振り向いた。
「綾子先生!」
雪江の明るい声に、康太も振り返った。
二人の後ろには、優しい笑みを浮かべ、白衣のポケットに手を入れて立つ辻綾子の姿があった。
「なんだか二人とも、とっても深刻そうな顔してる……」
柔らかな声は、二人の心を包み込む。
綾子先生なら。
雪江も康太も、同時に同じことを考えた。
それをいち早く口にしたのは、
「綾子先生、ちょっと聞いて欲しいお話しがあるんです!」
雪江だった。
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