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ただならぬ深刻さを胸に秘めたことが窺える康太と、それをなんとか助けたいのだろう、と推察出来る雪江。
その二人の自分を見つめる瞳の強さに、綾子は身構えた。
「私が力になれることかしら?」
綾子の言葉に、康太と雪江は顔を見合わせ頷いた。
*
午後一時を過ぎると一般の面会が始まり、病棟の廊下は見舞客が行き交う。
そんな中でも看護師は変わらず忙しそうに仕事をこなし、医師達は検査や病状の説明に病室を回る。
「あ、緒方先生!」
ナースステーションに、萌葱色のオペ着上下に白衣をはおった忍が現れると薬の分配作業をしていた看護師が声を掛けた。
「さっき心カテから戻った菅原さん、ご家族が来られるのは夕方だそうです」
カルテのファイルを受け取りながら忍は、そうか、と腕時計を見た。
心臓カテーテル術を一件無事に終えて、着替える前にナースステーションに戻ってきたところだった。
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