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美羽の瞳が、今にも零れそうな涙を湛えて溺れる寸前だった。
大河は、柔らかに、美羽の心を抱くように言った。
「俺、今でも思うんだ。
あの時、俺が美羽の手を離していなかったら、俺達は今でも一緒にいたんだろうか、って」
たられば、なんて好きじゃない。
常に前を向き、後ろを振り返ることのなかった大河が唯一後悔していること。
それが、美羽を突き放してしまった過去。
言葉に詰まり、答えを見つけかねている美羽の腕を、大河はグッと掴み、引き寄せた。
美羽はそのまま崩れ、大河の腕の中に落ちた。
「俺が、今でも美羽を好きだって言ったら、今の美羽は俺を受け入れてくれる?」
弱っている心に付け入るように入り込むのは好きじゃない。
でも、それも一つの方法ならば。
大河は美羽の腕を掴んだまま、反対の腕で彼女の腰を抱いた。
大河の膝の上で逃れられない体勢になった美羽は、露わになった足元を気にしつつ、彼の目をジッと見つめた。
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