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抵抗しようと強張っていた美羽の身体が柔らかさを取り戻し、大河は手を緩めた。
「美羽?」
涙を流して見上げる美羽に大河の胸がちくりと痛んだ。
美羽は大河の目を見詰めて言う。
「大河、私、あの日の大河の気持ち、聞いてなかったね。
教えて。教えてもらえないと、私、あの日の続きには進めない」
美羽の言葉に、大河は胸を打たれたように目を閉じた。
そして、崩れるように美羽の胸に顔を埋めた。
美羽は、大河の髪にそっと手を触れた。
嫌いになった男じゃない。
むしろ、好きだった、ずっと。兄との関係を築いてしまうまでは。
「そう、だよな」
美羽の胸元に響く、低い声。
忍の甘い声とは違うが、心の奥を震わせるような、心地よい響きを持った声だった。
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