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美羽の中に大河の想いが浸透する。
あの時、大河と美羽の関係に出来てしまったのは、空洞なのか。
それを埋めるものは?
自分が少しでも健康だったなら、と美羽は思う。
違う道が、違う未来が自分達の先には続いていたのだろうか?
自身の中に湧き起る数々の問いに答えを求め、必死に思いを巡らした美羽は、脳裏に微かな調べが流れたような気がした。
それと同時に過った姿は美羽の胸を締め付けた。
ラフマニノフ――。
蘇る甘い記憶が、込み上げる想いと苦しみを生む。
一緒に聴き行こう、と言った甘い声がまるで、今囁かれたように耳に残っていた。
「大河……」
掠れる小さな声に、大河は美羽の胸から顔を上げた
「美羽……?」
美羽の目から、涙が零れる。
「辛いの……苦しいの……」
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