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燃えていた紙片が黒い灰となった頃、広尾は不意にぽろりと言葉を漏らした。
「緒方君は、原先生にとって、一番の教え子、右腕と思っていました」
張り詰めていた室内に、今までと違う対流が起きたようだった。
原の顔に、血が通ったような変化が一瞬だけ見られた。
沈黙に、広尾が顔を上げると、原の視線は窓の外に向けられていた。
目が、遠くを見つめていた。
「緒方君への評価は、昔も今も変わらないよ。
評価は、ね」
独り言のような原の言葉は、冬の陽射しの中に舞い、消えた。
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