信じるものは #2

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 少し濃いめの凛々しい顔に、余計に濃い影が出来たようだ。 暫し、空を睨み、思案していた賢吾が重々しい口調で言った。 「綾子先生は、四年前に循内であった、緒方が関わった医療過誤事件、覚えていますか」  綾子の胸がドキンと鳴った。 あの、緒方忍が関わった事件だ、忘れるわけがない。 綾子は、様々な感情が去来し動揺する胸中をひた隠しにし、努めて冷静に答える。 「覚えてるわ。 あの事件が、何か関係があるの?」  賢吾は、静かに、ええ、と短く言い、黙ってしまった。 勘の良い綾子は、ここまでの少ない情報をパズルのピースに見立てて結論を導いた。  まさか、と賢吾の顔を覗き込んだ。 「もしかして、あなたが裏切った友人、というのは」  賢吾が、苦しげに目を閉じ、頷いた。 綾子の胸に、波となったショックが押し寄せてきた。 沖合でうねっていた波が、次第に大きなうねりとなって綾子に襲い掛かろうとしていた。
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