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学生時代からその能力を如何なく発揮してきた賢吾と忍。
彼らはずっと、互いの能力を認め、存在を意識し、切磋琢磨してきた、いわゆる好敵手だ。
ライバル、とはいえど、信頼し、尊重し、ここまできた筈だった。
賢吾は、どんな形で忍を裏切ったというのか。
綾子は、震えそうな声を絞り出す。
「あの、医療事故が、あなたの裏切りとどう関わるの?」
そう聞くのが精いっぱいだった。
賢吾は、綾子の顔を見ることなく、低い声で話し出した。
「今月の初めだったかな、K省の人間が俺の前に現れて、循内の話を聞いていったんですよ」
綾子は、ああ、と内心で思う。
循環器内科という科は、どうしても薬事と切り離せない科だ。
それは同時に、限りなくクロに近い灰色に染まりやすい、ということを意味する。
今、この院内を呑み込もうとしている不穏な空気は、循環器内科からのものなのか。
その中に身を置く忍を思い、背筋がスッと冷たくなるのを感じた綾子だったが、静かに賢吾の話に耳を傾けていた。
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