29人が本棚に入れています
本棚に追加
柔らかな感触に戸惑う賢吾は綾子の顔を覗き込んだ。
綾子は、賢吾の肩に顔を埋めていた。
「館山君は、正直なの。
誠実なの。
本当に嘘をつけない人なのよ。
だから、今こんなに苦しんでいるの。
でも、あなたのしたことは正しいと私は思う。
あなたを今苦しめている心に生まれた迷いは、きっと誰でもが持つものよ。
少なくとも、私はあなたという人間を信じられるわ」
「綾子先生……」
賢吾は掠れる声を絞り出し、自身の肩に顔を埋めている綾子を見た。
賢吾の声に、顔を上げた綾子はふわりと微笑んだ。
「大丈夫よ。
緒方君は、こんな事でどうにかなるほど軟じゃないこと、あなたが一番分かっているでしょう?
これは、館山君が苦しむことじゃないの。
館山君は、自分のしたことにちゃんと信念を持って、自信を持って堂々としていて。
この疑惑がちゃんと解明するのをしっかりと見届けるのが、関わった者の使命なんだって、しっかりと胸に刻んでおけばいいのよ」
最初のコメントを投稿しよう!