信じるものは #2

16/35
前へ
/35ページ
次へ
 賢吾の顔がゆっくりと解れ、崩れる。 今にも泣きそうに見え、綾子は胸を打たれた。  決して弱い姿を見せることのない、凛々しく逞しい男。 しかし、強さの中に弱さも持ち合わせ、それを普段はしっかりと自身の中でバランスを保ち、前に進む力を持っている。 それは何故か。 「館山君は、自分の弱さから目を逸らさずに、しっかりと見つめて、それを隠さない、ごまかさない。 今を乗り越えて、また強くなれる館山君なら、私は付いていくわ」  強さも弱さも、しっかりと持ち合わせ、それを的確に自らの中に認識している。 心の弱さ、痛みが分かる人間は、強い。 綾子は、この人となら、と思ったのだ。 この人を支えたい、そう思えたのだ。  付いていく、という言葉に綾子は精一杯の想いを込めたのだが、賢吾は綾子にフワッと笑いかけた。 「そうですね、緒方のヤツはこんな事くらい、跳ねのけてくれる。 緒方自身に疑惑がある筈がありませんからね。 俺は、俺のする事に真剣に向き合えばいい」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加