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そうよ、と微笑んだ綾子の包み込むような笑顔を受け、賢吾は目を細めた。
「綾子先生は、最高のカウンセラーですね」
生気を取り戻したように目に力が戻ってきた賢吾に、綾子はクスリと肩を竦めた。
「医師は、みんなカウンセラーでなくてはいけないわ。
ちゃんと、患者さんの心に寄り添わなければいけないでしょう。
それより……」
綾子が、賢吾を軽く睨んだ。
「館山君は、女心が分からないのね」
睨んでも愛らしさが滲む綾子の顔に賢吾は、え? と狼狽えた。
「え、俺、なにか失礼なこと言いましたか?」
気付けば、綾子は密着したまま離れない。
我に返った賢吾は、どぎまぎし始めた。
そんな賢吾に綾子の胸に疼くような感情が湧いた。
この疼きは。
「私の、精一杯の告白、スルーしちゃうんですもの」
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