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綾子が話した言葉を必死に頭の中で繰り返した賢吾は、一つの言葉に辿り着いた。
「付いていく、って……綾子先生……」
綾子は、頷いた。
「私、正直なところはまだ分からない。
でも、館山君のあんな姿見たくない、って思ったの。
支えてあげたいって心から思ったの。
その気持ちには、嘘はつけない。
館山君は、こんな私でも、受け入れてくれるの?」
賢吾は、伏し目がちになってしまった綾子の、肩に置かれていた手をそっと掴んだ。
初めて握った綾子の手は、細く、柔らかだった。
まるで、初めて女性の手を握った時のような緊張が、賢吾の胸を呑み込む。
深く息を吸い、気持ちを落ち着け、ゆっくりと口を開いた。
「俺の気持ちは、変わらないから。
俺は、綾子先生の視線がいつも誰を追っていたのかも知っています。
それでも、綾子先生を好きだ、って、俺じゃ駄目ですか、って言ったんですよ」
綾子は視線を上げ、賢吾を見つめた。
「今の私で、いいの?」
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