信じるものは #2

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 賢吾は深く頷いた。 綾子は、賢吾に手を取られたまま、込み上げる涙を堪える為にうつ向いた。  賢吾の手は、大きく、力強く、それでいて優しかった。 この手に、ずっと寄り添っていたい。そう思う気持ちに嘘はなかった。 「ありがとう、館山君」  掠れていたが、しっかりとした声が賢吾の耳に届いた。 「綾子先生」  賢吾の声が少し明るくなる。 綾子は顔を上げた。 恥ずかしさを押し隠す、はにかんだ少年のような笑みを見せる賢吾は言った。 「キス、してもいいですか」  綾子は、目を丸くし、賢吾を凝視する。 賢吾の顔は真剣そのものだった。 あまりにも直線的で真っ直ぐな表情に、綾子は思わず吹いてしまった。  思春期の男の子みたい。  心中で呟くも、雄々しく男らしい容姿と少年のような内面の差に、胸が鳴る。 あの胸の疼きの原因は、これね、と綾子は初めて恋をした時の感覚を思い出していた。
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