信じるものは #2

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 たまに見せるこの少年の顔と、明るさは。 「館山君、お調子者って言われるでしょう」  照れ隠しによるものだ。  年上らしい、弟に言うような口調で綾子に言われた賢吾は照れ隠しの仕草か、人差し指で頬を掻く。 僅かにむくれたようだ。  滅多に見せない表情に、綾子は愛しさを感じた。 「館山君、キスは、断らずに強引にして、心まで奪う方法だってあるのよ」  今度は、賢吾が目を丸くする番だった。 少しの間を置いて、賢吾は肩を竦めて柔らかに笑った。 「やっぱり、綾子先生には敵いません。俺は」  すっと伸びた賢吾の腕が綾子を抱き寄せる。 綾子が、あ、と声を上げるのと、賢吾が綾子の頬に手を添えるのは同時だった。 そして、少し強引に唇が重ねられた。  求められてするキスは、こんな感触だったんだ。 忘れていた。綾子は目を閉じた。  唇が離れても互いに顔は離さず、額を付けた。 綾子は目を伏せたまま、小さく囁いた。 「私たちは、ゆっくり距離を縮めていきましょう」
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