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綾子はクスクスと笑った。
「そう、いつも元気で豪快、が館山君だもの」
「なんだか俺が単細胞な男の代表格みたいな言い方ですね」
そうそう、と笑う綾子に、賢吾も一緒に笑っていた。
気持ちが上手く交わせずに、すれ違うように遠ざかり、強張っていたのは互いの心。
冬の空間に春の温もりがもたらされたように打ち解けあえば、笑みがこぼれるのはごく自然なことだった。
快い温もりに包まれて、心穏やかでいられる相手をただ一筋に想うことができたらどんなに幸せだろう。
綾子がそんなことを思った時だった。
賢吾が、綾子の顔を覗き込むようにしてフッと笑った。
「綾子先生はマイナスイオンかな」
綾子は、え? と首を傾げた。賢吾はクスリと笑うと窓の外に目をやった。
「不思議と、綾子先生と話すと楽になります」
楽になる?
綾子は、賢吾の凛々しくしまった横顔を見た。
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