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「館山君、なにか、あった?」
自然と口をついて出た言葉だった。
ここに来た時から気になっていた、賢吾の横顔。
彼らしくない影が見えた。
どんなに難しい局面にぶつかっても、大丈夫だ! と周囲を励まし乗り切ってしまう、と言わしめる、まさに磊落という言葉がピタリとはまる賢吾に射す影は、よほどの何かを抱えている事を窺わせ、綾子の胸に不安をもたらす。
窓の外を見つめたまま黙ってしまった賢吾を綾子は不安そうに窺った。
「館山君?」
「綾子先生は、友達を裏切ってしまったこと、ありますか」
賢吾は前を向いたまま、おもむろに切り出した。
思いもよらない、意表を突く問いかけだった。
綾子は答えに詰まる。
「友達を、裏切る?
ごめんなさい、ちょっと意味が分からないわ」
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