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不安という種が、心配という芽を吹く。
裏切る、という言葉は約束放棄といった言葉よりも重い。
どんなことをすれば、友達を裏切った、と言えるのか、綾子には諮りかねた。
「館山君は自分が、友達を裏切った、と思っているの?」
賢吾の問いに精一杯向き合おうと、綾子は逆に聞いてみた。
少しの沈黙を置いて、賢吾が苦しげに言葉を吐いた。
「裏切り、ました。
それも大事な友人の、将来を左右するかもしれない裏切り方を、しました」
綾子が瞬きも忘れ目を見開き見つめる先で、賢吾は膝の上に肘の乗せ、頭を抱えた。
「初めて、自分に嘘を吐きました」
「それは……」
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