信じるものは #2

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 声を出してはみたものの、言葉が続かない。 にわかには信じられないことだった。  賢吾は、誰もが認める誠実な男だ。 誰を、どんな形で裏切ったというのか。 自分に嘘を吐く、とは?  綾子は必死に思考を巡らせた。 しかし、あまりにも漠然とした疑問には解答など見つからない。 聞かなければ分からない。  綾子は締めつけるような胸の痛みを覚えていた。 視覚から受けた刺激に心が刺されるのは、何故か。 こんな賢吾を、見るのは辛すぎた。  綾子は、うずくまるように頭を抱える賢吾の肩にそっと手を乗せた。 「私に……話せる?」  沈む賢吾の、胸の奥底に優しく響き染み渡る柔らかな声だった。 少しだけ顔を上げた賢吾は綾子を見た。 「誰にも話せずに、苦しんでいたんでしょう?」 「綾子先生……」  目が合うと、綾子は微笑んだ。
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