約束のラフマニノフは、別れの序曲

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 始めは、確かに影を追っていたのかもしれない。 けれど、狂おしいほどに求め合った愛情に、嘘はなかった。  美羽は、紗羽の代わりなどではなかった。 今だから言える。  自分が愛したのは、美羽自身だ。 「分かっているよ。 美羽とのことは――、」  しかし、どんなに愛していても、許されないものならば。 「魔が差した、それだけだ。 だから、俺がこの家から消えればいい」  全てを否定して、自らがその責任を負えばいい。 美羽を守る為に。  もう一度庭を見た忍の目に映るのは、叩き付けるような雨が降りしきる中、美羽を抱える自分の姿。  今、あの夜にもう一度戻ったら、自分は何をするだろう。 どうすれば、この最悪の事態を招かずに済んだだろう。  答えは見つからず、忍はそっとため息を吐いた。
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