約束のラフマニノフは、別れの序曲

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 電話を切った大河は直ぐにベッドに横になっていた美羽の傍に来て言った。 「美羽、俺はこれからちょっと社に行ってくるけど、美羽はゆっくり休んでいるんだぞ」  一人になることの心細さと、大河の会社に起きた何事かに対する不安。 その二つが美羽の中で合わさり混じり合う。 「大河……」  大河は、心配そうに見上げる美羽の頬を撫でて笑った。 「そんな顔するなって。 大丈夫だから。直ぐに片付く」  美羽に優しくキスをした大河は、手早く身支度を済ませて出かけて行った。  それから、もう夕刻が迫る時刻まで、大河からの連絡はない。 どうやら、起きたトラブルは予想以上に深刻だったようだ。  美羽は枕に顔を埋めて目を閉じた。 押し寄せる不安の黒い波に、胸が呑みこまれそうだった。  大河は、きっと大丈夫。  私も、きっと。
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