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夕べは、このベッドで大河と一緒眠った。
その前の夜のような事はなく、静かに。
しかし、ぴたりと身体を寄り添わせ、手を繋いだ。
せめぎ合う迷いの感情は大きな二つの波となり、ぶつかり合ってその波頭が飛沫をあげる。
美羽は、優しい温もりが溢れる大河の腕の中で、苦しげに眉根を寄せた。
「美羽が、生きていてくれたらそれでいいから」
大河の言葉が、そんな美羽の心を抱いた。
生きていてくれたら。
美羽は、大河の胸に顔を埋めて泣くことしか出来なかった。
迷いは、何処かで吹っ切らなければいけないだろう。
美羽が目を開けると、少し前まで東側だけを覆っていた影が、部屋全体に拡がろうとしていた。
斜に射し込んでいた陽射しが心もとない細さになり、窓辺だけを明るくしていた。
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