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美羽が消える? そんな不安が胸に迫り、大河は美羽の手を握った。
「でも、美羽をこんな……」
「大河のせいじゃないの」
大河の言いたいことは、痛いほど伝わってきた。
美羽は、優しく微笑みかけた。
「これは、大河のせいじゃないの。
仕方ないの。
具合が悪くなるのも波があるの。
その波の谷間がちょうど今だっただけ。
だから、大河のせいじゃないんだから」
大河は、それ以上何も言えなくなってしまった。
美羽は、どうしてこんなに人の心を先回りして読み、気を遣うのだろう。
信号が青に変わる。
大河は、美羽から視線を切り、前を向いて車を発進させた。
暫く続いていた沈黙を美羽が破った。
「おじいちゃんのところ、今夜は無理ね」
「当たり前だろ。そんな状態じゃ無理だし、かえって心配させるだろ、と言っても、大介じいさん、まだ人工呼吸器つけてて話せないんだよ。
今はまだ、ICUだ。
もう少し落ち着いてからでいいだろうって、おじさんが」
美羽が、驚いたように身を起こした。
「大河、お父さんに会ったの?」
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