約束のラフマニノフは、別れの序曲

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 さり気なくオフィスを見回すと、電話をくれた笠原が、こちらを見ており、目が合った。 大河はアイコンタクトを交わす。  今は、堪えろ。  互いの目がそう言っていた。 「どうしてこんなことになった?」  全てが終わり、刑事が去り、静かになったオフィスの中央デスクに社員が集まったところで、大河は込み上げる感情を押さえ、静かに言った。 朝から出社しており、刑事達の突然の訪問に対応した笠原が答える。 「令状持って来たのは二課の連中だった」  二課? と大河の顔が険しくなった。  捜査二課。 企業犯罪、贈収賄等の知能犯を扱う課だ。 大河は、ドン、と拳でテーブルを叩いた。 「うちは何も心当たりはないぞ」  そう言いながら、社員の顔を見まわし、幹部が一人いないことに気付いた。 「寺井はどうした」  笠原が、苦い顔をした。 「実は、連絡がつかない」 「なんだって……」
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