約束のラフマニノフは、別れの序曲

16/29
前へ
/35ページ
次へ
 大河の顔に、サッと閃光が走った。  それだ。  今、大河と笠原が必死に調査していた例の医療関係サイトの開発に大いに関わったのは、寺井だった。  このサイトを立ち上げることを大河が提案した時、意の一番に賛成してくれたのが、寺井だった。  そのことを思い出した瞬間、大河の胸を悲壮にも似た感情が染める。 身近な人間の裏切りは、もう味わいたくはなかった。  仲間を信じること。  その信条がなければここまでやってはこられなかった。 それが、裏切られた? 「笠原、例のスレッド、賄賂絡みってこと、裏取り段階だった?」  笠原は、ああ、と頷いた。 「でも、まさかうちの社内で一枚噛んでるとかは想定外」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加