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少し顔を上げ、天井を見つめて煙を吐き出した大河は、ゆっくりと口を開いた。
「ともかく、だ。
うち(会社)自体は潔白だ。
疑いが晴れれば押収されたものも返ってくるだろ」
そこで顔を下ろした大河が集まる社員を見渡した時、さかんに電話が鳴り出した。
オフィス内の電話全てがけたたましく音を立てる。
どこかからこの騒ぎが漏れたのだろう。
大河は不敵な笑みを浮かべた。
それは、戦闘開始の表情だった。
「乗り切るぞ!」
力強く言い放った大河の言葉にそこに居合わせた全員が深く頷く。
頼れる社長は、これまで何度も会社の危機を乗り越えてここまで来た。
皆、信じていた。
笠原も、よし! と手を叩く。
「じゃあ、まずは電話の対応!」
「それから、この騒ぎがこれ以上大きくなる前に株主である重役の長老連中に心配ご無用、の連絡だ!」
大河と笠原はそれぞれ、あうんの呼吸で社員達にてきぱきと指示を出し始めた。
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