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「緒方先生のパソコンを? さあ……僕は夕べほとんど病棟にいて、ここには戻ってこられたのは今朝の……そうだな、九時くらいです。
それからはずっとここにいますけど、今朝は緒方先生のパソコン使った人はいないと思います」
忍は隣の後輩い医師の表情をサッと盗み見た。
一瞬でその表情から心を読み解く。
彼の言葉に嘘はなさそうだった。
「そうか、悪いな、変なこと聞いて」
後輩医師は、いえ、と言いながら、忍の顔を窺うように聞いた。
「どうかしましたか、パソコン」
忍は展開していた画面を一つずつ確認し、閉じていく。
「いや、別に誰が使っても構わないようにしてあるんだが、使ったのがカルテみる為じゃなさそうだから、他に使うとしたらなんだ? と考えていた」
そうですか、と答えた後輩医師は、ああそういえば、と忍の方に身体を向けた。
「夕べは、随分遅くまで広尾先生がここに残っていたって、今朝誰かが言ってましたけど。
それは別に関係ないですよね」
忍は、それは、大いに関係あるかもしれないぞ、という言葉は心中で飲み下し、そうだな、とだけ答えた。
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