32人が本棚に入れています
本棚に追加
パソコンの画面の奥に潜む不穏な闇。
闇は浸み出し点を作り、次第に拡がり染みとなり、全てを覆ってしまうのか。
良心、正義を蝕む闇となるのか。
立ちっぱなしだった忍が椅子に腰を下ろし、改めて電子カルテを展開した時だった。
医局の出入口近くにあった電話が鳴った。
近くにいた医師がそれを取った。
「はい、内科医局。
え、斉藤? いや、ここにはいないけど」
自分が指導医を務めている研修医の名が思いがけないところで出、忍は顔を上げた。
「アイツが担当してるクランケが急変?
なんだよ、アイツいないのか、その辺に!
ピッチは? え、繋がらない?」
それを聞いていた忍は立ち上がり、傍にあったPHSと聴診器を掴みとった。
「緒方が直ぐにそっちに行くと言ってくれ」
電話を取っていた医師にそう言い放ち、忍は医局を飛び出して行った。
*
最初のコメントを投稿しよう!