信じるものは #3

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 前を向き、ハンドルを握ったまま大河は、ああ、と答えた。 「実は、美羽を病院に送った後、おばさんから電話があったんだ」 「お母さんから!?」  予想だにしなかった大河の言葉に美羽は倒していたシートから身体を起こした。 大河はそんな美羽をさりげなくシートに寝かせ、言った。 「美羽を、しばらく頼むって。 美羽が困らないように身の回りの最低限のものをまとめたから、俺に取りに来てほしいって」  大河はそう言うと、後部座席を指さした。 指された先の革張りのシートの上に、美羽が愛用していた赤い小型トランクが置かれていた。 「お母さん……」  複雑な想いを抱えて呟いた美羽を気持ちを汲んだのか、大河は言葉を継いだ。 「ああ、誤解するなよ。 もう帰ってくるな、っていう意味じゃないみたいだから」  美羽が大河に視線を向けると、鼻が高く彫りの深い横顔が前方を見つめていた。 「どういう、意味?」
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