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どういう意味?
溢れ返っていた拍手が鳴りやみ、ホールは水を打ったような静けさに包まれた。
その中で黛は、美羽にそっと囁くように言った。
「このコンサートが終わったら、ちゃんと話すよ」
ステージではピアニストとコンダクターが視線を合わせ、アイコンタクトを取っていた。
手がピアノに置かれ、指揮棒がスッと上がる。
一瞬の、息を呑むような緊張の後、重厚なピアノの音が鳴り響き、音楽が始まった。
ああ、この音だ――。
美羽の心が、全身が震えた。
夢との断絶を告げられた時も、この曲だった。
そして今、大事な恩師との別れが訪れようとしているこの時も。
それだけではない、自分は今、決別しなればいけないものを抱えている。
私にとってこの曲は、別れを決意する曲になるの――?
美羽は、胸に手を当て、目を閉じた。
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