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日も暮れ、街が煌々と光を灯す時刻になっても大河のオフィスは一向に落ち着きを取り戻してはいなかった。
まず、なにがなんだかわからないまま取らねばならない対策、というものに苦慮した。
問い合わせの声も途絶えることなく、対応をとらなければいけない。
大河が電話を顔と肩で挟みながらパソコンを駆使しているところに、河原が声を掛けた。
「たいがー、弁護士先生がきたぜー」
大河はパソコンに向かったまま、ああ、と答えた。
コツコツという高らかなヒールの音が近づいて来、大河のいるデスクの前で止まった。
「つれないわね。
顔も上げてくれないの」
「今それどころじゃねーの、見てわかるだろ」
フローラル系の香りが辺りを包む。
鼻を掠めたその香りだけで顔を上げずとも顧問の弁護士事務所から今日は誰がやって来たか分かった。
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